税制改正の議論を透明化

古本伸一郎 前財務大臣政務官

古本伸一郎
――民主党政権になって税金の取り方、使い方は変わったか。

 租税特別措置で7兆円を超える減税がある。税による一種の補助金なので「租税歳出」と呼ばれているが、自民党政権下では各種の業界団体に対して選挙応援と引き換えにこと細かにこれを行ってきた。これを本当に政策本位の制度に変えたいと考えて取り組んだ。

――成果は。

 農家が肉用牛を売却した場合1頭当たり100万円未満だと2千頭まで税金がかからない。このような措置は豚にも鶏にもない。かつて自民党の大物議員が作った税制で、40年間も続いている。このような象徴的な租税歳出を見直そうということで、2千頭を段階的に縮減する。


古本伸一郎
――民主党政権では税制改正決定の仕組みをどう変えたのか。

 税制改正の決定を自民党は党税調の「インナー」と呼ばれるドン数人でやったとされている。我々は政府税調をインターネットでリアルタイムに公開、党税調も平場で決める透明な仕組みに変えた。

――税制も透明に?

 かつて「税はサラリーマンが負担すればいい」と言った政府税調の御用学者もいたが、源泉徴収の対象になっている給与所得者に公平だと思っていただける仕組みにすることがポイント。社会保障と税制の共通番号制度導入の準備に入っている。こういうものが一つひとつ入ってくれば透明感が高まる。

――法案が通らないと、特に影響が大きいのは。

 継続を予定している期限付きの負担軽減措置。住宅を購入した時の登録免許税は税率を軽減して買いやすくしている。これが3月末までに通らないと税率がどーんと上がって増税になってしまう。
 航空機燃料税の引き下げも予定している。現在はキロリットル当たり2万6千円で、米国の10倍だ。その結果、これを財源に日本中に90近い地方空港を造ってしまった。これを今回下げる。航空機のチケット価格も下がればこんないいことはない。


古本伸一郎
――なぜこれまで下げられなかったのか。

 野党時代、空港整備勘定はおかしいとつねづね指摘してきた。しかし与党は空港を造りたい。空港は、県知事がだいたい20~30年前に整備計画を立てる。市議会、県議会、国会と二重三重の構造で陳情があり補助金が配分されていく。それを「なりわい」としている人がいるということだ。
 しかし、空港が完成してテープカットした時には、すでに人口減少社会になっている。もし本当に必要なら明日にも鍬入れ式をできるように、三層構造を変えていくことこそ改革の要だ。

――3年前の「ガソリン国会」では逆の立場だったが。

 あのとき我々が反対したのは、高騰したガソリンをガソリン税分だけ下げようという理由からだった。生活コストを何とか下げようと国民運動として戦いを挑んだ。今回は逆に通らないと増税になってしまう。ぜひ野党にも大局をみて賛成してほしい。


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